勘と経験を誇る仕事とは、最新のテクニックを先取りすること。
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BANSEI®の「提案しながらのお付き合い」で生産財ヒントを「なかまぼっくす®」から紹介。

現場経験で選んだ「PT七つ道具」の紹介

先輩から慈しみの提案・・・確実な浸透探傷試験(PT)結果は良い道具から



 
NDT技術者の技量を示す資格のレベルは1・2・3の数字ですが、PT作業現場における技術内容は暗黙知や属人的技術など、いわゆる官能で得た勘や経験による観察判断を言葉で表します。
 このように数値で表現が困難なノウハウがJIS規格化され、業界団体の適格性証明や資格証明によって技量が示されることから、その有資格者の判断力は高度に集約されたものであり、決して見て聞いただけで理解できるものではなく、触れる(現場経験・講習など)毎に勘を養いながら蓄積されたものです。
 また、技量のかかわる仕事で、職人が弟子に向かって「技は盗め」とか「習うより慣れろ」の言葉もありますが、NDT技術者の場合は技だけを真似ても原理・理論・規格などの専門知識が必要であり、当然ながら浸透指示模様の合否判断一つが被検査対象物の寿命や故障に影響し、更には拡大被害へと繋がるのですから、その観察者の判断が安全維持の要となり、当然その検査報告記録と添付の写真内容には大きな責任が及びます。
 これらのことから、これまでPT検査における勘や経験の保有者であった先輩が世代交代で退職したとか、講習会においても教えて貰えない細かなノウハウの一部に過ぎないことですが、最近BANSEI/CPIラベルの紹介を受け、これこそ技術伝承の一手法と共感し、これからのPT技術者の皆さんに私がプラントメンテナンズの現場経験から選んだ「PT七つ道具」の一つに含めて紹介しました。
                                                                  (伝慈嘆称)

浸透探傷試験に必要な補助用具と作業ポイント



あえて説明するまでの事は無い?・・・しかし・・・必要に迫られないと気付かない!そんな道具の使い方

 
(1)竹串・綿棒・割り箸・工業用ヘラ

・竹串は、 前準備や洗浄時に最も使用頻度が高い道具?です。これと言った用途に決まりはありませんが、試験部位の状態を変形させずに傷内で固化した汚れの掻き出しなど前準備や洗浄作業時の“重箱の隅をつつく” 作業で必ず役立ちます。

・綿棒は、現像作業前に溶剤で滲み出た細かなキズ部分の浸透液をカラ拭きする時に必要です。
 また、(7)CPIラベルの基準線番号や比較マークを写真に写し込みするときに、現像剤の拭き取りに使います。

・割り箸や木ヘラの先端は薄く削っておくと何かと使い易く、プラスチック製のヘラより作業状況に適応し易く便利です。

・構造物の錆や汚れが酷い状態などでは、サンダー掛けやサンドペーパーを使いますが、小さな傷の探傷作業では焼き鳥の串一本のほうが役立ちます。

(2)筆・竹ブラシ・タワシ・小箒

・筆は、穂先が丸形と平形で油性用を作業に合せて何種類か揃えて置く必要があります。なお、作業状況によっては浸透液を直接スプレーしないで、一旦、小さな容器に受けてから筆に浸けて使用する200ml程度の容器か小皿も必要です。 

・洗滌用の竹ブラシは、柄の部分が少し曲がった物が使い易く、歯ブラシの使用も便利です。

・タワシ・小箒は、清掃や現像剤の剥ぎ落としなどに使用します。仕上げはウエスで拭い取りします。

ブラシは黒毛または樹脂繊維製を主に用います。真鍮製やワイヤーブラシの使用は試験対象面の材質によって、傷による疑似模用を作ってしまう恐れがありますので注意が必要です。

(3)作業灯 ・UVライト ・防爆ライト

・現像作業が済んで観察を行う作業場所の明るさは、蛍光浸透探傷試験では20lx以下の暗い場所、染色浸透探傷試験は500lx以上の明るい場所とJIS規格Z2343-1でも規定されています。また、照明の光源は蛍光灯の様に面発光で発光斑が無い物が必要です。多数の点光源で構成されたLED照明の場合は、照射距離によっては現像面に疑似模様が現れ観察しにくいことがありますので、検査用として開発された製品を選ぶ必要があります。

・染色浸透探傷試験では、発光斑の無い蛍光管式かLED式で手持ちタイプのコードレス作業灯が最適です。また、照明器具は洗浄作業の有機溶剤や現像時のエタノールに触れますので、LB-8AEなど耐薬品用の作業灯が必要です。

・蛍光浸透探傷試験では、前準備や後処理時に使うLB-8AE作業灯と充電器やバッテリーが兼用できるLB-8LW-UV紫外線ライトが同じ形状なので、交互に充電して使えるので大変便利です。

・換気の悪い場所や有機溶剤を扱う危険雰囲気場所の作業には防爆ハンドランプを用意しておく必要があります。(*防爆については防爆電気設備の基礎をご覧下さい。)

(4)巻尺・ノギス・ゲージ類

・探傷試験の指示模様は二つとして同じものがありません。また、現像指示模様には直接触れて測定出来ないので、それなりに計測の工夫が必要です。

・巻尺は、試験部位の位置測定を始めとして多く使用しますが、ロック付が何かと便利です。

・ノギスは傷など指示摸様の測定に使用しますが狭い場所では使えませんので、指示摸様サイズをスケールへ移すためにコンパスかデバイダーも必要です。また、傷の位置角度を示すのに分度器も必要になります。

・探傷試験の観察判断基準としては、JIS Z2340の目視基準ゲージが必要です。この場合、試験方法に合せて染色用・蛍光用・磁粉用の3種が必要です。なお、目視判断の比較目安とするにはCPIラベル下端の比較マークの利用が役立ちます。

・その他、PT試験の観察トレーニングや浸透液の確認には、JIS Z2343-3の対比試験片がありますが、移動した現場で浸透液の確認などに小型の確認用試験片を用意しておくと、試験結果に不安があるとき確認できて安心です。

(5)ルーペ・点検鏡

・NDT有資格者に欠かせないのが視力の良さですが、微細な傷や指示模様の判別や配管などの陰部分の観察では、拡大鏡と点検鏡は欠かせません。

・デジタルカメラの拡大機能があってもルーペは、俗に言う大型で低倍率の“虫メガネ”とスケール目盛付ルーペかポケット顕微鏡が必要です。とくに「目視基準ゲージ」で確認する場合も小さな傷や割れの確認には拡大しての判断が必要です。作業者の視力にもよりますが拡大率は3倍・10倍・30倍位を揃えておくと確実な検査ができると思います。

・点検鏡は探傷試験よりも寧ろ狭い部分の漏れ検査や試験面の裏側確認など、何があるか計り知れない探傷試験で目の届かない個所の原因究明にかかせません。大きさは作業内容に合せて選ぶことと、なるべく柄や首部分が自在に曲がるフレキシブルタイプが便利です。

(6)ドライヤー・エアダスター


・ここでは比較的小さな探傷試験対象を想定した道具を紹介していますが、大きな構造物の探傷ではスチーム洗浄機で高温スチームをノズルから噴射して汚れを落とすとか、高圧のエアーで吹き飛ばす方法もありますが、ここでは道具を手にして移動する規模の検査作業を想定しました。

・ドライヤーは、セラミックヒーターを使用した工業用のヒートガンが良いのですが、表面乾燥程度ならヘアードライヤーでもまに会います。
但し、使用は不燃タイプの探傷剤に限ります。有機溶剤やLPG使用の探傷剤の場合は必ず換気の良い場所のみでの使用に限ります。

・エアダスターは、空気かCO2使用のものが火気に対して安全なのですが、何れにしても洗浄剤は可燃性の有機溶剤ですので、洗滌作業でエアーを吹付けると作業場所周辺は“爆発性雰囲気”になり火気“危険箇所”になりますので、火気と換気には常に注意が必要です。
なお、 “爆発性雰囲気”の生じる区域での作業については、防爆電気設備の基礎に移動して詳しくご覧ください。探傷試験そのものは安全に作業できても、工場の定期点検時などでは他の工事も集中して行われますので、離れた場所からの溶接やグラインダーからの“飛び火”にも注意が必要です。

(7)CPIラベル・筆記用具

・NDT探傷試験の後処理後は、作業内容と観察結果をまとめて試験報告書の作成となりますが、目視による観察結果内容を正確に第三者が理解できる内容で報告文書に纏めるには、リアルタイムの記録がなければ成し得ません。とかく浸透時間や現像時間など作業状況と時間を気にしながら的確なメモを残す事の大切さを、最後の段階で反省に至っていては手遅れです。こんな時にCPIラベルを作業補助に使用する事で、作業内容から観察結果までを確実に写真記録として残せるので説明責任を全うできます。

・CPIラベルは、現像剤塗布作業の膜厚さ目安として使用の後、その現像状態と欠陥指示模様及び指示模様比較マークを一枚の写真に写し込んで、現像剤の塗布量と観察結果を記録保存するには欠かせません。

・筆記具はCPIラベルへの書き込み用に黒色のボールペンか2B程度の鉛筆のほか、欠陥箇所指摘用に海老茶色(濃い赤茶色)の油性ペンが必要です。

(8)ブリキ缶・ジッパー袋・ゴム手袋

NDT・PT作業は、移動しての作業が殆どであり、且つ、有機溶剤類の使用があることから、火災予防と安全面に配慮して作業準備する必要があります。

・ブリキ缶やペール缶は必需品です。蓋付のブリキ缶は洗滌剤の浸みこんだウエスを保管して引火や蒸発を防ぐために使用します。ペール缶はこれらの七つ道具を入れて運びます。

・ジッパー袋は、A3サイズ程度の物3~4袋用意しておき、ウエスを浸透液の汚れ程度毎に分けて保管します。とくに、余剰浸透液の除去時は、汚れの多いウエスから順に使って浸透液を拭き取り、最後に新しい白ウエスで拭ってから現像剤を吹き付けします。また、それぞれのウエスを使うときは必ず一方向に一度だけ拭いとりして、順に汚れの少ないウエスを使用することで余劇浸透液による疑似模様や汚れが防げます。

・ゴムやビニル手袋は、浸透液や洗浄剤から手を保護します。浸透液の名の通り何にでも良く浸みこみます。油断すると金属の割れ検査が手指の罅割れ検査になってしまいます。

(*)その他、試験条件によって必要な物。

(a)ゴーグル(UV兼用):長時間の蛍光探傷作業や現像作業時における目の保護。

(b)マスク:洗浄剤や現像剤吹き付け時の保護。

(c)温度計:検査面の温度測定に非接触型の赤外線放射温度計が便利。

(d)表面調整工具:サンドペーパー・サンダ―・チャンネルブラシ・スクレーバーなど。

(e)測定工具:時計・ストップウォッチ・計数機・コンパス・デバイダー・スケール・分度器など、

(f)記録・筆記具:カメラ・マーキングチョーク・油性マーカー(茶色)・刻印など、

(g)防錆剤:傷に影響なく被試験面を保護できる物。防錆紙・ラップフィルムなど、

(h)ウエス類:紙ウエス・白ウエス・黒ウエス(蛍光発光しない物)・ラップフィルム

(i)作業灯:作業場所照明と手元照明の組み合わせなど、詳細はクリック。

NDT・PT作業は、特別な浸透探傷検査でなければ、探傷剤セットと上記の「七つ道具」があれば殆どの現場で作業ができます。反面、対象試験部位の状況に応じて、これらの道具だけで如何に確実な試験結果を引き出すかがNDT・PT資格者たる正に属人的技術者の手腕の見せ所と言えます。

以上、これら七つ道具のヒントを基に、皆様の経験によるノウハウを加えて後輩諸君に受け継がれることを期待しています。

                                                          (伝慈嘆称・2010年春)
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