染色浸透探傷試験は人間の目視感覚頼りの判定であるため、その判定誤差を少なくするには、試験標準となる欠陥見本や試験片を用いて、定期的な試験特性と技量の確認が必要です。試験特性や技量の確認には、染色探傷浸透液の浸透反応や浸透指示模様の出現状態から、概ね次のような傾向を校正した試験片などで確認して、常に最新の特性状態を反映できる必要があります。 (*各リンク元の前のページに戻るには、プラウザの「←戻る」ボタンをクリックしてください。)
1)キズの形状誤差:浸透探傷によるキズの浸透指示模様出現は、浸透液特性の誤差を除けば、キズの幅x長さx深さに貯留した容量の浸透液が、速乾現像剤の塗布により吸収された浸透液が浸透指示模様の幅x長さの面積として現れ、この時、現像剤の膜厚さにより浸透指示模様の面積を増減しますので、何よりも安定した現像剤の膜厚さ形成が正確なキズ検出の要となります。現像剤の膜厚さと浸透指示模様出現状態の確認には、F.6.3.欠陥内部の除去など試験の前準備を完全に行ってから〈キズ出現試験片〉で現像剤膜厚さの基準を決めておく必要があります。
2)円形状の大きいキズ:浸透液を多く保持(貯留)するが余剰浸透液除去時に過除去による精度誤差が生じ易いので、浸透指示模様と浸透液特性の確認にはE.5.余剰浸透液の過除去・除去不足に十分配慮してから〈浸透液試験片〉によるキズと浸透指示模様の関係確認が有効です。
3)円形状の小さいキズ:口径が小さく深い傷は浸透液の保持量が安定。ブローホールや貫通穴などに連なったキズは、極端に大きな浸透指示模様の出現になるので欠陥原因判断に役立つのですが、キズ口径の大きさと浸透指示模様の関係はF.5.現像剤膜厚さの確定で現像剤の膜厚を一定とした上で〈浸透液量試験片〉によるキズと浸透指示模様の関係確認が有効です。
4)線状のキズ:前処理が完全であれば、ごく微細なキズまで確認できますが、浸透液の浸透特性不良で指示模様が出現しない場合や、現像剤の塗膜厚さによって浸透指示模様が隠れてしまうなど、探傷剤全体の特性が影響するので、B.4.観察精度向上に必要な要素を含め試験部位の状況把握と試験片〈地模様試験片〉や〈JIS Z2343-3:対比試験片〉によるキズ検出感度の確認が大切です。
5)割れキズ:形状が複雑な線状の浸透指示模様で検出され、評価が割れの場合は殆どの工業分野が全て“不合格”の評価になるので、その形状判断は人工キズによる浸透指示模様の見本では困難です。理想は過去の不合格キズの現物を見本とした物や実際のキズの写真集と対比して確認することが必要です。
特に割れによるキズは、キズ幅に対して比較的浸透液の保持量が多いので、現像剤の膜厚さが厚過ぎると円形や線状の浸透指示模様に変形して誤認され易く、現像剤の膜厚さが薄いと連続浸透指示模様などに誤認されますので、浸透指示模様の形状とその下のキズ形状の関係を試験対象材質ごとにその特質を把握しておく必要があります。なお、実験室レベルで確認するには、試験片〈微細キズ試験片〉や〈JIS
Z2343-3:対比試験片〉による確認が参考になります。
6)試験部位の荒さ:表面状態見本用試験片以外は、試験片表面は平滑に仕上っていますので、完全な余剰浸透液除去が出来ますが、試験部位が粗面やグラインダー研削面の場合は、浸透液の回りこみで擬似模様が現れますので、試験前にF.7.浸透時間と現像の温度など試験条件の注意が必要です。試験片〈浸透液試験片〉による浸透液のぬれ性確認や浸透速度が参考になります。 |
染色浸透探傷試驗(PT)関連の試験片としては、JIS Z4323-3規格の非破壊試験―浸透探傷試験―第3部:対比試験片で、タイプ1〜3の3種類がありますが、これらは浸透液の感度などを試験する目的のものであって、ここで提案の現像剤の塗布厚さやキズと浸透指示模様の関係確認用とは目的が異なります。
なお、試験片についての詳細は、JIS Z4323-3規格票内の付属書に詳細仕様があります。 |
アルミ製試験片の取扱いについては、ここで紹介の各種試験片のほか、JIS Z2343-3対比試験片など、校正や証明に用いる物の取扱いには細心の注意が必要です。
特にタイプ3対比試験片の様にアルミ合金製の物は、キズや腐食の影響を受けやすいので保管・取扱いに注意が必要です。
また、真鍮製の試験片の取り扱いでは、超音波洗浄や水系洗浄剤を使用の場合は、絶対にアルミ系の容器や試験片と接触させないことと、表面の変色や艶により目視による現像剤の膜厚の見え方が大きく異なりますので、現像剤膜厚さの管理には必ずCPIラベルを使用する必要があります。
保管時には他の金属との接触や酸、アルカリなどの付着が無いことを確認して、試験片を良く乾燥させてから個々に紙などで包み、プラスチック製の袋か密閉容器に乾燥剤と校正記録などと共に入れて保管します。
使用後は、現像剤の塗膜を完全に除去した後、試験片内に残った浸透液を完全に吸い出す目的で、まず除去液をスプレーして表面から揮発させた後、直ちに速乾性現像剤を多めにスプレーして約30分程度静置します。
その後、現像剤の塗膜を柔らかいブラシで完全に払い落としして後、除去(洗浄)液を吹きつけて10分程度経ってから、再び、除去剤を多めに吹きつけて十分濡らしてから、白いペーパータオルか濾紙を押し当てて、汚れや浸透液で色付かない事を確認して後、十分乾燥してから保管します。
対比試験片の汚れ除去については、JIS Z2343-2の附属書B(規定)工程管理試験B.4.2.1で規定されています。
ここではI. CPIラベルの実証に用いた試験片についての除去確認方法で、特に繰り返し試験の誤差を最小とするなど試験片の品質管理の面から、より完全な除去のため小型の超音波洗浄機で除去をしました。
この場合、超音波洗浄に用いた洗浄剤による影響で割れキズなどに影響を与えない事と、腐食から保護するために良く乾燥しての後、浸透探傷液用の除去剤を再度スプレーして良く乾燥する必要があります。
なお、環境保護の面から溶剤代替の水系洗浄剤が多く使用されていますが、水系洗浄剤の場合は洗浄完了の後、良く水でリンスして完全な乾燥処理がなされませんと、試験片のキズ内部に染み込んだ水系洗浄剤が十分乾燥しません。この場合はメタノールやIPA(イソプロピルアルコール)など水溶性の低沸点溶剤に浸漬置換して除去乾燥するか熱風などで強制的に乾燥して後、シリカゲル等の乾燥剤を入れた密閉容器で保管します。
*注意:溶剤除去性の除去剤として多く使用されているnヘプタンは、水には溶解しませんので、水系洗浄剤が染み込んだキズ内の汚れや水分を取り除く事はできません。
*注意:複数の試験片を除去・洗浄する時は、必ず同種の金属のみで行い試験片の材質が異なる場合は、洗浄液の全てを新たに取り替えて行います。特にアルミ材質と真鍮材質などは除去・洗浄ばかりでなく保管時にも接触を防ぐ必要があります。 |
自作した試験片などの校正は、関連の規格全般で示す水準や原則と同等以上の特性を備る必要があります。
ここに紹介の試験片は何れも簡単な構造であり、基本単位が時間・温度などで裏付け確認ができます。
試験片の確認例として、CPIラベルの記入欄に、・Work:試験片の校正・Place:試験片の番号・No.: 校正記録の番号または校正日付を予め記入して、カバーシールを貼り戻して校正記録の準備をしておきます。
次に、完全に除去・乾燥した試験片に規定の温度条件(*)で浸透液を適用して規定時間浸透した後、CPIラベルと並べて配置して、現像剤塗布基準線番号Cまで現像剤をスプレーして、塗布基準線番号の数字Cの現像剤を綿棒などで拭い取り(定着)して後、規定の現像時間まで経過した時点で写真撮影します。これにより、写真が試験片の最新の状態を反映した基準写真になるので、定期的に校正目的の写真撮影を行うことで、試験片に劣化があっても校正の試験評価には影響しません。
なお、基準線番号Cは現像剤の塗布厚さの中間であることの例示なので、通常指定する番号の使用でも差し支えありません。
大切なことは、校正に用いる探傷剤は必ず規定の組合せであって品質管理してある物を使用することと、B.6.1.現像剤塗膜厚さの定着の説明とおり現像剤をスプレーするときに、塗布基準線の隠蔽状態に注意して定着のタイミングを逃さないことです。
定着のタイミングは、現像剤のスプレー直後の透明状態から溶剤が揮発して白色に変化して、塗布基準線が隠れた状態を目視角度30〜60°で確認した時点を“定着”として判断します。
また、JIS Z2343-3対比試験片-タイプ3を校正する場合も同様の手順で写真を残す事で、校正証明することが出来ますが、試験片内の模様が複雑で判別し難い場合は、CPIラベルにより現像剤膜厚さレベルを2−4−6などのように、浸透指示模様の出現状態を段階的に変えて確認することで、正確な試験片校正ができます。 (*)試験が中高温または、低温による試験の場合には、前もってCPIラベルを貼付けしてから探傷試験を行います。(結露の影響や火傷防止のため。) |