■■■危険場所で移動使用する照明灯■■■
固定設置と移動使用する場合で、その危険遭遇の違いは?
【“防爆機器”を必要とする、新しい技術分野における“爆発性雰囲気の危険場所”の照明条件についてのお問合せが多くあります。これについての説明、及び、二通りの防爆規格がある防爆電気設備の「構造規格」と「技術的基準」について、bansei.comホームページに掲載の製品を実例にして、当社独自の考え方を以下に記します。尚、説明の一部には防爆関連法規等に当て嵌まらない内容があることをご了承ください。】
*ページ末には関連法規定などの参考文献と索引【かかわり検索キーワード】を用意してあります。.関連の情報収集にご利用ください。
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■一般の機器との違いについて ■異状発生!! ・・・・・で? |
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■(1)爆発性雰囲気における防爆型照明について
防爆システムを必要とする危険場所を考える場合、これまでは、主に石油化学プラント・薬品製造や塗装作業などのように、可燃性ガスや引火性液体を使用する、限られた作業場所を指していました。しかし、最近のコージェネレーションシステムや電気自動車、燃料電池など、新しい技術の発展と共に、その設備内容や所在箇所は多岐に渡り、爆発性雰囲気の危険場所が益々複雑となり、小型化し、広域に散在するようになりました。しかも、何れも防爆対策が法的に義務付けられています。つまり、益々慎重かつ万全な防爆対策が必要になってきたということです。
そして、これら防爆電気設備の一部には各種の防爆型照明機器も含まれており、その照明方法は、概ね“固定設置された照明機器”と“広範囲を移動して用いる照明機器”の二通りがあり、このことにより、その対応に困難や迷いが生じる場合もあるようです。
そこで、新しい技術分野における危険場所やその対応範囲の推測から、これまでの防爆構造の種類やグレーゾーン
*2)(概ね非危険区域)の存在を含めた安全対策が必要であり、特に“
広範囲を移動して用いる照明機器 ”については、状況変化に対応した新たな安全対策が絶対必要です。
まず、防爆型の照明機器とその照明方法としては次の4通りが考えられます。
1)爆発性雰囲気の室や施設の隔壁に設けた“明り取りの窓”やミラーを用いた間接照明。
例:タンクの点検窓、塗装や実験室の採光窓、屋外施設の照明など。危険場所から離れていて爆発性雰囲気が無い、安全な区域からの投光や反射による間接的な照明。
2)爆発性雰囲気の危険場所内に固定して設置した防爆型照明器具。
例:蛍光灯・白熱電球・LED・高圧ナトリュウムランプ(低圧ナトリュウムランプは使用できない。)
3)危険場所を含む一定範囲を移動して使用する照明器具。
例:耐圧防爆構造蛍光灯ハンドランプなど。
4)危険場所に限らず広範囲に移動して使う照明器具。
例:防爆型携帯電灯・キャップランプなど、これらの照明機器を使用する範囲と目的としては表1の様に考える事ができます。
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“危険場所”のレベルと照明手段および作業内容 |
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照明手段 |
*1) 0種危険場所 |
1種危険場所 |
2種危険場所 |
*2) グレーゾーン |
非危険場所 |
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1)間接照明 |
○ |
○ |
○ |
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2)固定照明 |
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○ |
○ |
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3)特定範囲移動 |
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○ |
○ |
○ |
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4)携帯して移動 |
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○ |
○ |
○ |
○ |
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可燃性ガスや蒸気の発生状態 |
常時発生または引火の危険 |
通常作業で発生の可能性あり |
異常時に発生の可能性あり |
危険区域と安全な場所の境界域 |
防爆対応不要で通常安全な場所 |
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作業内容と照明を扱う者の条件 |
通常は立ち入りや接近しない |
労働安全衛生法や消防法など、 |
保守・点検・修理・警備・管理などの通常作業で接近の可能性がある者 |
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*1) 0種危険場所で使用できる防爆電気機器の種類は
“本質安全防爆構造(ia)”であれば、国際基準では使用可能である。しかし、日本の関係規則にはその使用区分が無いので通常は間近で使用しない。また、(n)の防爆構造は日本において規格がないので使用できないが、輸入製品の一部に於いては国際規格に準拠しているので2種危険場所で使用可能の判断をしている例もある。
*2) グレーゾーンとは説明都合上の表現であり、危険区域と安全な場所の境界域を指し、本来“非危険区域”に該当するため法律上も防爆設備の必要がなく、防爆の規程等にも“グレーゾーン”呼称は無い。
例として、2種危険場所にも含まれない危険場所への出入り口付近・材料や製品の受け渡し場所・塗装作業終了後の室内・自然発生して滞留した可燃ガスなど、異常時を想定しても考えが及ばない“偶然性が高い原因の危険場所”≒“はたして偶然? 生産施設等の爆発火災死傷事故”
などの原因も、一部に於いてはグレーゾーンに分類される内容を含んでいると言え、“万が一”とか“偶然”に対しても、保守・点検・修理・警備・管理など「真っ先に駆けつけて確認する者」が手にする防爆型携帯電灯や帯電防止衣服の在り方までグレーゾーンの検討範囲と言える。
■(2)照明の固定設置と移動使用に於ける危険遭遇の違い
爆発性雰囲気の危険場所に設置する防爆電気設備であれば、防爆電気設備の基礎 にも説明の通り、その危険場所に適した防爆方式の照明機器を使用して防爆システムを構築すれば良いが、同じ爆発性雰囲気の危険場所であっても移動や携帯して用いる防爆型照明機器においては、その使用状況によって危険への遭遇確率の違いがあり相当慎重に検討する必要があります。
その一例として、同じ2種危険場所の区域内の施設であっても、比重によっては、ダクト・ピット・隔壁・カバーなどの構造や位置などの関係で、場合によってはガスの滞留が起きると爆発性雰囲気が長時間生成した状態になり0種や1種の危険場所になりうるのです。偶然という条件を含めて危険場所を考えると0・1・2種に分けられる危険度ではなく、幅広く危険の可能性を考えなければなりません。ですが、設備のコストなどを考慮すると実用面から対応できなくなってしまいます。(具体例:屋外のタンクを養生シートで覆ったばかりに、その内部にガスが充満など、)
しかし、*1)グレーゾーンの様に保守・点検・修理・警備などの作業においては、そもそもその場所が“異常な状態であるか否かを確認や修繕する”のであるから、作業者が危険に遭遇する確率がとても高い場所であり、このことは、これまで
“修理点検中における爆発事故”が多く発生した例からしても明らかと言えます。
これらのことから、防爆型携帯電灯など移動して用いる防爆機器は、偶然発生のガスの滞留などを想定すると必ずしも固定設置した防爆機器とは“防爆方式”や“防爆等級”を同等に設定できないものと理解する必要があり、むしろ非防爆区域や通常作業に用いる携帯電灯であっても、保守・点検・修理・警備などの業務に携る作業者は、爆発性雰囲気の危険場所に接近する可能性が僅かでもあるならば、そこに発生や滞留する
(A)自然発生の引火性ガス・(B)既知の引火性ガス・(C)作業などで発生の引火性ガス・(D)新しい技術分野の引火性ガスの存在が推測され、そのガスや蒸気に対して絶対に着火源とならない防爆型の携帯電灯が必要であると言えます。
〇 偶然の危険性を想定したガスの発生例
・(A)偶然発生の引火性ガス・・・・・自然発生のメタンガス・醸造や発酵のアルコールなどの引火性蒸気・都市ガスやプロパンガスの漏れ。最近では都市の温泉掘削現場でメタン噴出引火など。
・(B)既知の引火性ガス・・・・・石油類・天然ガス・アセチレン・水素など、燃料・原料・材料のほか生産や副生成物として発生する引火性の危険物。いわゆる危険場所内での事故。
・(C)作業などによるガス蒸気・・・・・溶接ガスのアセチレン・塗料のテレピン油やシンナーなどの溶剤・消毒のアルコール・接着剤、印刷インキなどの溶剤・スプレーなどの噴霧ガスなど、むしろ本作業中より作業の準備や後片付け養生中など、間接作業工程中の安全対策が大切。
・(D)新しい技術分野の引火性ガス・・・・・これまでになかった電気自動車やガス発電システムのほか、プラスチックの熱分解による炭化水素ガスの製造、バイオマスガスを利用したガスエンジンや水素改質・燃料電池の利用など、地球環境保護対策などで生成される新しい技術分野の爆発性ガスなど、特にこの分野は、ビジネスサイクルが短く推測困難な未知の危険性が増えてきます。
■(3)携帯電灯(移動使用する照明)に於ける防爆の概念
移動使用する照明機器においては、例え同じ危険レベルの場所であっても“危険遭遇の違いと偶然の危険性”からすると危険の可能性はとても高くなります。しかし、推測できる事象全てを防爆対策するとなるとコストパフォーマンスからも実用面で不可能となります。そこで、実用的な面から危険性を想定すると表-3-1の例になり、これらの状況に各工場や現場の条件を組み合わせて考える必要があります。
表3−1・偶然発生を想定したガスの種類及び発生原因
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発生の状況 |
ガスの種類 |
発生原因 |
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(A)偶然発生のガス |
メタン・プロパンなど |
天然ガス・都市ガス配管の損傷など予知困難 |
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(B)既知の引火性ガス |
工場内に存在するガス・蒸気 |
異常な状態のレベルと副生成されるガス |
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(C)作業などのガス |
アセチレン・シンナーなど |
作業中や作業後の換気や温度変化・管理不備 |
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(D)新しい分野のガス |
水素・熱分解や発酵で発生 |
危険推測不足・複合原因の発生・経験の不足 |
表3−2・ガス・蒸気の危険特性と対応等級分類
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*3)
対象のガス |
発火温度 |
引火点 |
*4)
密度 |
温度等級 |
機器分類 |
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(A)自然発生の例でメタンガス |
537℃ |
ガス |
0.55 |
T1 |
UA |
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(B1)石油プラントの例でナフサ |
290℃ |
-6℃ |
2.50 |
T3 |
UA |
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(B2)工場の危険物例でジエチルエーテル |
▲170℃ |
-45℃ |
2.55 |
▲T4 |
UB |
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(C)溶断作業の例でアセチレン |
305℃ |
ガス |
0.90 |
T2 |
▲UC |
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(D1)新しい分野のガス例で▲水素 |
560℃ |
ガス |
0.07 |
T1 |
▲UC |
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(D2)新しい分野の例でエタノール |
425℃ |
12℃ |
1.59 |
T2 |
UA |
*3) 対象ガスの選定理由
(A) トンネルやボーリング工事の他、地域によって天然ガスの湧出やメタンの発生が有ります。
(B2) 工場内にジエチルエーテルの使用や保管場所があることを想定してあります。
(C) 溶断で多く使用され、特に屋内作業に於ける漏れや狭い空間でトーチやバーナーの立ち消えに注意。
(D1) 燃料電池や電気自動車など急速に使用数や貯蔵施設が増えるが、対応機器がUCと厳しい。
(D2) 地球環境保護の観点からバイオマス燃料などでエタノールの利用が増えると思われます。
*4) 例示の密度は空気を1とした場合のガス蒸気密度で、滞留発生場所の判断になります。
▲は表の中で最も厳しい数値。(温度等級と機器分類=爆発性ガス=防爆等級の中で最も厳しい条件で設定。)
(出典:(社)産業安全技術協会/ガス又は蒸気の主要な危険特性並びに防爆電気機器の温度等級及び分類との対応)
■(4)移動使用する照明の防爆構造条件
防爆型携帯電灯は、爆発性雰囲気の危険場所(1)〜(3)全ての使用環境において、絶対に着火源とならない防爆構造と性能が必要です。
尚、日本の電気機器の防爆構造規格には、これまでの法規定などの成り行きから《構造規格》と『技術的基準』の二通りが存在しており、その種類や原理内容は殆ど同じですが、規格表示の対応内容や判断時に注意が必要です。以下は、当社のホームページ掲載の製品を実例にして二通りの防爆構造規格で説明してあります。
例として、表3−2・ガス・蒸気の危険特性と対応等級分類表内から最も厳しい条件を選び、その全ての条件に耐える防爆構造条件(詳細は防爆の基礎参照を『技術的基準』《構造規格》で列記した場合は次の条件が必要です。
・使用場所 :工場、事業所用 ・・・・・・・・・・記号=U ・・・・・・・・・・・・・・ 《
防爆/構造規格では記号無し》
・爆発性ガス:水素に対応できること・・・分類=C ・・・・・・・・・・・・・・《
防爆/構造規格では3a》
・防爆構造 :1種2種の危険場所 ・・・本質安全防爆構造=ib・・・《
防爆/構造規格ではib》
・発火温度 :170℃以下 ・・・・・・・・ 温度等級=T4・・・・・・・・・・・・《
防爆/構造規格ではG4》
◎防爆構造条件を決定するには、爆発性ガスの種類とその発火温度が基準になり「防爆電気機器の分類と温度等級表」から選びます。携帯電灯のように移動によって対応するガスの種類や温度条件が異なる場合は、遭遇が推測される爆発性ガスの中から最も厳しい条件を選び、それらを組み合わせして最も厳しい防爆構造条件を決定する必要があります。
■(5)防爆型携帯電灯の使用可能範囲(《 》は構造規格で表示)
●防爆型携帯電灯:A・T・X95100型
〇防爆規格/技術的基準〔Ex
e ibUC
T4〕の例
・Ex
= 防爆/技術的基準のシンボル ・・・・・・・・・・・・・・・・ 《
防爆/構造規格では表示無し》
・e ib = e
:安全増防爆構造 ib:本質安全防爆構造 ・・・ 《
防爆/構造規格も同じ》
・UC =
U:工場、事業所用 C:分類Cのガス(水素) ・・・・・ 《
防爆/構造規格では爆発等級3a》
・T4 = 温度等級 :
表面温度135℃以下 ・・・・・・・・・・・・・・・・ 《
防爆/構造規格では発火度G4》
これにより(4)の条件で移動使用する照明の防爆構造条件例に充分対応できます。
■(6)耐圧防爆構造蛍光灯ハンドランプの使用可能範囲(『 』は技術的基準表示)
●耐圧防爆構造蛍光灯ハンドランプ: FEMW−3100型
〇防爆規格/構造規格〔d2G4〕の例
・ 防爆の記号 = 構造規格では表示無し ・・・・・・・・・ 『防爆/技術的基準ではExを表示』
・
d = 耐圧防爆構造 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・『防爆/技術的基準も同じd』
・
2 = 爆発等級2 =石炭ガス・エチレン ・・・・『防爆/技術的基準では分類UBのガス』
・
G4 = 発火度135℃以下 ・・・・・・・・・・・・・・・・・『防爆/技術的基準ではT4』
(4)の移動使用する照明の防爆構造条件内には“水素ガス”がありますので、
《構造規格:d2G4》≒『技術的基準:ExdUBT4』の規格内容では使用できません。
■(7)耐圧防爆構造/分類Cのガス対応で移動使用する蛍光灯(『 』は技術的基準表示)
●耐圧・防爆型ハンドタイプ: EXSL−27
型
〇防爆規格/Ex d U C T5 技術的基準表示で表示
・ 防爆の記号 = Ex
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・『防爆/技術的基準で『
Ex 』を表示』
・
d = 耐圧防爆構造 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・『防爆/技術的基準で『 d
』を表示』
・ U =
工場・事業所用 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・『防爆/技術的基準で『 U
』を表示
・ C
= 分類Cのガス(水素・アセチレンなど)・・・・・・・・・・『防爆/技術的基準で『 C
』を表示
以上の通り防爆機器類は、危険な作業環境で使用することから、安全確保のためには決して欠くことができない機器として、防爆対策機器の使用が法的に義務付けられています。
しかし、これまでの説明にもあるとおり、時代の変化や産業技術等の発展で新しい危険性や旧来の技術水準では対応や推測できない技術的な環境変化が次々と起きてくることも事実です。
そして、“爆発性雰囲気の危険場所”