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作業灯と色で品質管理

非破壊検査・目視検査のはじまり
  ▲文中の(*)印は、文末に注釈として関連資料を案内してあります。 

 ときおり、明るみとなる食品の不正や偽装、品質問題など、食品の品質確認に不可欠な色の目視検査は、基礎的な非破壊品質管理手法の一つですが食品に限らず目視による検査作業では、見るための仕事にあわせて選べる作業灯つまり、検査場所の照明環境が大切です。
 もちろん、それ以上に大切なのは、顕微鏡で検査するICなどのミクロな半導体製品をはじめ、広大な敷地にある原子力発電所や化学プラントなどの設備機器検査に不可欠な非破壊検査の浸透探傷試験など “人間の目による目視検査
(*5)”能力です。


溶接個所の目視検査

 この目視検査や照明環境問題にラーメンとか天丼などの食品とか、微細な構造のICから超大型プラントまでを例にして品質管理問題を語るのは、これら全てが“対象物を分解しないで簡単確実に良し悪しを判断”するには、現在のところ“人間の目による目視検査”が最も優れているからです。この様に述べると「X線や超音波による検査装置」や「自動検査測定装置」による非破壊検査はどうした?と言うことになりますが、ここで言う“簡単確実”とは、被検査対象物の状態を変えずに非接触で高度な判断ができるからです。

 “人間の目による目視検査”が最も優れていることの検査対象の条件は、“表面の状態”と“欠陥内容が不定”で“形態が多種多様”な物、つまり「いろいろな形で良し悪しの基準が決めにくい物の表面」であって、検査の対象が無限に多くて検査コストと能率と可・不可の判断が困難な物体が対象であり、人間の目と判断力に代えて知る方法が他に無い品質検査についてです。

 例えば、食品、薬品などの品質管理には可、不可の二通りしかなく中間の評価はありえません。故意に行なった不正行為は別として、日本的な判断に見られる「不満はあるが良く頑張っている」や「まァこの位なら良いか」的な抽象評価を下し、可を与えてしまうと重大な事故を招きかねませんし製造や管理者の判断が甘かったとも言える事が原因で、悲惨な結末となった報道や事故報告例(*1)は改めて述べるまでもありません。反面、まろやか・さわやか・なだらか・など性質や形態を示すが曖昧でハッキリしない表現は目視どころか人間の五感でも判断基準が決められません。

 特に食品については人間の体内に入り健康に直接影響を及ぼすのですから当然のことですが、他にも生命に関わる交通機器や工業製品にしても「絶対にあってはならない・ウッカリでは済まされないなど」非常に厳格な検査が必要とされます。また、消費者が食品を購入したり選んだりするにあたっては、「売っているのだから安全であると」の潜在的な信頼にはとても高いものがあり、食料品店でパック詰めなどを購入する際や、飲食店で調理されたものについては殆ど疑いを持たないで、見た感じで選ぶのが普通であると思われます。これほどの信頼は、食品業界に従事する方々が長い年月に渡って培ってきたおかげです。この様にごく普通に潜在的な信頼を得ている工業製品を買ったりサービスを受けているものほど、信頼を裏切らぬためにも一層の努力、厳しい品質判断が求められるのは目視検査する者の宿命と云えましょう。

今日、明日に食べる物は、におい、味、そして見た目で判断するしかないのです。

 食品品質の確認や検査には幾通りもの方法があり、理化学機器を使用する専門的な試験などの場合は別にして、ごく自然に行われている人間の五感による品質確認や検査の中で、簡易で確実な方法として、またフリータイミングの方法として、目視検査について述べます。完成した製品が生産中に行われた各検査を、全て合格していることを確認するのが最終検査で、この検査に合格してはじめて製造者を離れて・・・・・HACCP?ISO?などと、あまり堅苦しくなく!つまり、昼飯に食べてきたラーメンについて考えます。


ラーメンも最終検査は目視

 ラーメン店の製造工程(調理と言わないところが専問的?)で言えば豚骨や麺を買い入れるのが受け入れ検査の段階で、麺を茹でたり調味料を入れたりスープの色合いを確認するのが製造検査で、チャーシュウの枚数と刻み葱の量の確認が出荷検査となり、・・・どの段階に於いても必ず目視検査つまり目で見ての判断が含まれています。これは、敢えて品質管理云々などではなく前述の「食品を扱う方の長年に渡って培てきた・・・」そのものと言えるでしょう。つまり、ラーメン店の調理場では人間の経験と五感による判断が最終決定になり「ラーメン一丁あがり〜ィ」と言うことになります。

 但し、この場合感性には個人差があり、バラツキもあるので全作業者、従業員に「チャーシュウや葱の量はこの位」などの“共通の指標”を持たせるためのマニュアルが必要になるでしょう。ところがチャーシュウ何枚という数量の場合は良いですが、経験と感で調味したラーメンのスープの味をほかの者がスープの色で味を確認などとなると「見た感じがいつもと違う」や「少し濃いようだが夜だから」など、見た感じと覚えていた事で感じとる?のは難しいものです。まして、食材の産地とか種類になると確かな目と正しい光で判断するしか無いと言えるのではないでしょうか?つまり、“共通の指標”が無いことが問題なのですが、これを化学プラントの溶接作業などの検査では曖昧判断を改善する工夫として“CPIラベルを使用した浸透探傷試験の作業手順例の実例があります。
 

前口上が多すぎますが、ココから照明=作業灯です。 

 感覚というものは周囲の環境の影響を受けるのでマニュアルの中でいくら指標を設けても絶対値とはなりません。たとえば、色の変化によって食品、食材等の変質や加工内容を見極めることができますが、照明灯の光の色温度、光束、演色評価数によって見え方が(*2)変わってしまいます。 物の色が物体の変化として認識できるのは光源から放射された光が物体に当たり、反射した光が目に入ってくることによるのですから、元になる光源の内容が変われば物体の色も当然に変わって見えます。つまり作業や検査する場所の明るいか暗いかによる濃淡の見え方の違いも生じます。また、同じ照明の下でも見る角度によって見え方が大きく異なります。

 例として一定の照明の条件下で一つの箱を置いて、ある方向から見たときに、それぞれの面が違う色(濃淡)に見えるのは云うまでもないことでしょう。つまり、色の変化によって食品、食材の変質/劣化や加工内容を読み取るのであれば、あらかじめ色を見る方法つまり、照明や検査の環境や基準を決めておく必要があり、照明器具や発光源の統一が必須となり、特に蛍光灯では光色やメーカー名迄に配慮が必要です。(作業用の照明としては“作業照明選びのポイント”が参考になります。)

 また、色の見え方は背景によっても変化します。同じものが明るい背景であれば暗く見え、暗い背景であれば明るく見えてしまう、色の相対性は周知のとおりです。ですから、壁の色や容器などが変わった時や、新たな設備機器が導入されたり照明器具や光源を取り替えた折には、色見本などでの確認や作業者への周知徹底などの注意が必要です。特に加工中の色合い確認や材料投入前の品質劣化を色で判断する場合は、必ず同じ位置・同じ照明(*3)であることが必須条件です。これら色の関係する品質確認作業で大切なのは、自然光で見るか・自然光に近い照明で見るか・検査専用の波長の照明を使うかのいずれかとなります。 

 とくに最近問題となるのは、LEDなど新しい光源によるものの見え方=演色性Ra
(*4)の問題があります。これは作業照明の歴史からしてても、カンテラ・ロウソクからOILランプ⇒ガス灯⇒アーク灯⇒白熱電球⇒水銀・ナトリュウムなどの放電灯⇒蛍光灯⇒ハロゲン電球へと進化してきて、1990年頃に現れたLED(発光ダイオード)が赤などの単色で点発光あったものが、2000年前後から次々と開発された白色高輝度LEDが進化して、従来の白熱電球や蛍光灯にない、数々の優れた特長を持った製品が普及しました。その代表的な特徴としては消費電力が少ない・視認性が良い・長寿命など、従来の光源とは比較にならない高性能なのですが、新しい光であることで従来の作業照明概念との違いを理解する必要もあります。

 従来の照明光源と感覚が異なる例としては、
(a)光の暖か味:最近のクリスマスツリーの光や交通信号機の色が冷たい感じなど、視認性は良いが電球のような暖か味を感じない。
(b)グレアと見え方:金属罫書きや精密機器の検査など、柔らかい散乱光での作業が望ましいが点発光のLEDでは見え難く眩しい。
(c)影の影響:
蛍光灯のように管面からの発光ではなく、狭角度の点発光なので近距離の照明では明るさに斑が生じる
(d)演色性:
白色LEDの進化で演色性Ra
(*4)が良くなってきているが、製品の新旧やメーカーによって格差があり確認が必要。
(e)コスト比較:
消費電力が少なく長寿命など長所があるが、明るさ対コストの面では現在のところ蛍光灯に比べ高価である。
(f)設置条件:
電源の条件、反射鏡の角度、放熱構造、フィルターの条件などから、従来の照明器具に取り付け出来ないものがある。


 つまり、これらの基準となる光の色温度、全光束、演色評価数Raが関係(*4)するので、製品の品質管理や検査を色で行うならば、必ず基準となる標準色見本と適切な照明手段を整えておく事が大切です。 物の色が物体の変化として認識できるのは光源から放射された光が物体に当たり、反射した光が目に入ってくることによるのですから、元になる光源の内容が変われば物体の色も当然に変わって見えます。工場内では自然太陽光(晴天時で日の出後3時間から日の入り前3時間迄の北側からの入射光)だけによる検査は不可能なのですから、品質確認や製品検査に用いる照明手段は常に安定した照明環境を維持するために、特に蛍光灯などでの照明は必ず同じメーカーの同品種の使用と累計点灯時間及び検査位置などが、同じ条件であることの指示確認のマニュアル化が大切であり、これがLEDなどに光源を変更する場合は、事前の試験などで大幅な基準見直しが必要です。 

 また食品や連続加工で大量生産する製品のように全数を検査できない場合は、加工工程または生産管理そのものの確認検査が重要であり、設備そのもののメンテナンスなども、品質維持の要と言えます。とくに製品製造中の製品不良発生防止には、非破壊検査(*5)などによる入念な生産設備の点検・保守・保全と、故障や破損の予知とその検査記録が次回 “目視検査”時の的確な資料となります。

 以上、製造物責任や品質保証・環境と意識高揚のある今日これらを全従業員に浸透させ徹底させてこそ目視検査は有効となります。そして目視検査を行う際の環境の統一、一貫性、マニュアル化などこれらは全社的に行うべきことで管理責任者が変わっても容易に変更してはならない、正に「初心忘る可からず」なので、文頭の「可を与える」か「可からず」なのかが大切なのですが、このところのLED照明による照明の大革命期に於ける品質管理担当者は、光源についての情報把握が必須です。

参考文献及び関連の資料

 (*1)(財)日本消費者協会発行「事故情報収集制度報告書」及び、鰍ャょうせい発行「食品偽装 -起こさないためのケーススタディ」など、
 
(*2)色の見えかたに影響する作業灯の光源は、蛍光管の種類(分光分布)で判断できますが、LEDの場合は各メーカーの仕様確認が必要です。
なお、色に関する書籍では「発行所:(財)日本規格協会の色をはかる」などが理解しやすく参考になります。
(*3材料や加工工程の確認及び機械保守作業などには、保護ケース付きの蛍光管式作業灯一覧は、ココをクッしてご覧下さい。
(*4)照明と色の見え方について社内標準などを決めるときは、JIS規格 Z−8716/表面色の比較に用いる常用光源蛍光ランプ
 ・JIS規格 Z−8718/観測者条件等色度の評価方法 ・JIS規格 Z−8720/測色用標準イルミナント及び標準光源
 ・JIS規格 Z−8723/表面色の視感比較方法(解説部分)・・JIS規格 Z−8724/色の測定方法・・JIS規格 Z−8725/光源の分布温度及び色温度
 ・
JIS規格C8152/照明用白色発光ダイオード(LED)の測光方法などのJIS規格票も参考になります。
 
(*5) 工業製品の非破壊検査に関する日本工業規格JIS規格一覧
 ・JIS G 0431 ・・・・・・・ 鉄鋼製品の非破壊技術者の資格及び認証
 ・JIS Z 2305 ・・・・・・・ 非破壊試験―技術者の資格及び認
 ・JIS Z 2323 ・・・・・・・ 浸透探傷試験及び磁粉探傷試験―観察条件
 ・JIS Z 2329 ・・・・・・・ 発泡漏れ試験方法
 ・JIS Z 2340 ・・・・・・・ 目視基準ゲージを用いた浸透探傷試験及び磁粉探傷試験の目視観察条件の確認方法
 ・JIS Z2343-1 ・・・・・・ 非破壊試験―浸透探傷試験―第1部:一般通則:浸透探傷試験方法及び浸透指示摸用の分類
 ・JIS Z2343-2 ・・・・・・ 非破壊試験―浸透探傷試験―第2部:浸透探傷剤の試験
 ・JIS Z2343-3 ・・・・・・ 非破壊試験―浸透探傷試験―第3部:対比試験片
 ・JIS W 0904 ・・・・・・・ 航空宇宙用機器の浸透探傷検査方法
 ・JIS W 0905 ・・・・・・・ 航空宇宙用非破壊検査員の技量認定基準

 *上記内容は、1996年12月に、このホームページの前身「なかまぼっくす・FAX情報サービス」にPL法対策の話題として掲載されたものです。最近の食品品質やLED照明の普及などから部分的に更新しました。なお、編集時点の諸規格、規定、法律判断などと異なる場合もある事をご承知下さい。2010年3月15日(信天翁/莫迦凡)
 
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