LANケーブルの移動と静電気

LANケーブルの移動使用と静電気帯電の問題と安全対策
(1)移動と静電気帯電について

ネットワーク機器設置や配線作業でLANケーブル布設時の静電気帯電問題について情報を得たのは、弊社LANケーブルリールユーザ様からの問合せにおいて「展示会場で布設中のLANケーブルをHUB接続したとき故障(ラッチアップ?)が発生した際です。
 
LANケーブルを接続換えするまでは正常に動作していたので、静電気の影響ESDと思われる。念のため未接続LANケーブルのRJ45プラグのピンに低電圧用の検電ドライバー触れてみたところ“両端が接続されていない状態なのに帯電している。何故!?”と言うご相談でした。

移動すると静電奇が起きる!! 


 ・・・そこで、汎用LANケーブルに限った
静電奇!? について、
 (1)
移動と静電気帯電(2)静電気除電とアースについて述べると共に、現場でできる(3安全対策ツールの実例です。
  文中カッコ内の文字は関連情報をweb検索で把握するための検索キーワードです。安全対策で“除電ツール”とあるのは別名:静電気除去ツールです。
  専門用語など、詳しい説明が必要となったときは主要な検索エンジンの検索枠に 
カッコ内の文字を入力して検索アクセスして、説明の補足としてください。

原因不明の原因!?
 
摩擦・剥離などの運動や接近・誘導により電気的に物体の極性が片寄る事を静電気帯電といい、極性が反対の帯電物体と接触する時に電子が移動して火花が飛び散る事を静電気放電と言います。
 この静電気放電は色々な弊害を起こします。特に電子機器の誤動作や半導体素子損傷の問題を引き起こし、あるいは石油化学分野では
爆発性雰囲気における爆発引火の引金となる場合があります。このように静電気による障害は色々とあり、ひとくち では説明できません。
そこでLANケーブルの取扱いだけに絞った静電気帯電について
原因から安全対策例としての静電気除去ツールについて述べます。
 まず、LANケーブルなど移動使用する物体で静電気の影響把握が難しいのは、その現象が過渡的(一過性)であり再現が困難だからです。これは、原因を究明するために計測機器で確認しても過渡的な現象であること、そのうえ測定の条件が移動や変動する測定環境であっては、その都度異なった測定結果になってしまい、これが確かなトラブルの原因であったと言う証拠にはなりません。
 結果的に“静電気が原因であったと思われる”など曖昧な表現や事象が再現困難なので“静電気か雷様が悪い!”などと責任回避的な説明になってしまい易いのが
静電気放電ESD問題です。
 余談ですが、LAN回線のトラブルの原因として「静電気放電よりも落雷ノイズの方が多い」の声も聞きますが、これはその状況が稼働中の機器に接続してある既存のLAN回線を指してのことであり、最近の公衆網(WAN)をはじめ長距離や屋外LAN配線には光ファイバーケーブルが使用されていますので、これらの回線では落雷や誘導ノイズの心配はありません。  ここで指摘しているのは展示会や会議場の設営などで、未接続のLANケーブルを 引き回すなどした場合の注意を喚起するものです。
 そこで、bansei.comではLANケーブルリールのユーザ様からの情報のほか、
LANケーブルの移動使用と静電気帯電について、
なかまぼっくすの仲間からのアドバイスを基に安全対策と“除電ツール”別名:静電気除去ツールについてご報告します。

内容は 「BANSEI・なかまぼくす」で簡単な測定実験をして、移動したLANケーブルをHUBLAN対応I/O機器に接続した場合の危険性と安全対策の目安です。
 なお、測定値は市販のLANケーブルを使用した独自の簡易試験によるものですので、作業安全対策の参考や目安としてご利用下さい。

 
渦巻き状に巻いたLANケーブル10mをアルミ皿上に置いた状態で測定。

 これからは無線LANの時代なのに?
 
本来、LANケーブルは頻繁に移動や引き回しして用いる目的には設計されていません。例えば家庭やオフィスに於けるデスクトップパソコンの場合は、一旦設置したら配置換えでもしない限り、LANケーブルを移動することは殆どありません。
 しかし、展示会場や会議場でパソコンを多数使用する例など
LANケーブルリールを使わなければならないようなLANケーブル布設をはじめ、企業内のサーバーセンターの結線作業や工場で多く使用される産業用ネットワーク機器や試験・監視の入出力ユニットなど、いわゆるLAN I/Oを接続して情報伝送する場合は、多数のLANケーブルパッチケーブルの移動や接続替えが頻繁に行われます。
 これらは、個人用の無線LAN普及の伸びに反して、
イーサーネットLAN)機能の向上と共に、伝送能力・簡単な布設のほかノイズ対策やセキュリティ面からも無線LANや従来のケーブル伝送では対応 できない面もあることから、イーサーネットCAT6〜CAT7(カテゴリ7)規格の普及と共にローコストで敷設が簡単なLANケーブルの移動使用(*1)が増えています。
(*1)一時期、将来イーサーネットCAT6は無線LANや光ケーブルの普及で使われなくなる?などの声もありま したが、その後CAT6e⇒CAT7⇒CAT6aなど、次々と高機能なメタルLANケーブルが開発されて、その情報伝達量や安全性と扱い易さなどの面から、工場や施設内の移動使用 に益々増えて います。

何故今になって問題?
 
LANケーブルの使用が個人ユースから産業・業務用に多く使用されることで、LANケーブルの接続本数が多くなりトラブル発生件数が目立ってきたこと、そして、LANケーブルの 布設距離が長くなってきたことからLANケーブルの静電容量(C:キャパシタンス)が大きくなり、それに比例して静電気帯電による放電エネルギーも大きく、ESDでネットワーク機器を損傷する危険性が高くなります。
 特に、両端が開放状態になったLANケーブルの長さと静電気帯電のエネルギーについては、これまであまり問題視されることも無かったので、過去に原因不明で処理されたLAN回線トラブルの 発生原因であったかも知れません。
 勿論ながらLANケーブルは、機器に接続した状態で使用するその諸特性が問題なのですから、両端開放状態に於ける静電容量や静電気帯電は伝送特性に直接関係しません。唯一問題となることはケーブルを機器に接続するその瞬間だけのこと。つまり、 文頭で紹介のように機器に接続したとき故障が発生
であれば、その殆どは瞬時が大事”となる静電気放電ESD問題 なのです。
 これらについてはLANケーブルの仕様書などに警告の例もありますが、多くのカタログ表示ではケーブルの伝送特性についての表示が中心であり、静電容量に関する表示では芯線1対のペア線間のみの表示が殆どであって、静電気帯電に関係するLANケーブルの被覆と芯線間や布設した状態に於ける芯線と床(アース側)間の静電容量データ表示は、
これまで見受けられません。
 勿論これらは、LANケーブルを布設して機器に接続した後に於いては、LANケーブルの伝送特性にしか関係しませんので、伝送特性に関係する芯線1対だけの静電容量の表示であっても当然と言えます。
 そこで、移動使用しなければならないLANケーブルに限って、bansei.comで実測した4対LANケーブル10mの静電容量測定結果 が下表
各部の静電容量値です。 概ね静電容量が大きい=蓄積する静電気のエネルギーが大きいと理解して安全対策に利用して下さい。

4対LANケーブル、10mの静電容量 (芯線の各対間及び 布設状態の静電容量)
・各部の静電容量 CAT5e UTP  CAT5e (STP CAT7 撚り線/ScTP CAT7 単線/ScTP
  A) 芯線1対のみの静電容量 510pF 490pF 490pF 460pF
  B) 芯線1本対7本間 690pF 730pF 780pF 720pF
  ) 芯線1本対床面間(アルミ皿) 260pF  280pF(*c) 340pF(*c) 320pF(*c)
  D) 芯線8本対床面間(アルミ皿) 340pF  380pF 500pF 480pF
  ) 芯線8本対シールド間 ――― 3.300pF 6.000pF 5.500pF
  ) 芯線1本対シールド間 ―――  740pF(*f) 840pF(*f) 790pF(*f)
  G) シールド対床面間(アルミ皿) ――― 420pF(*g) 590pF(*g) 560pF(*g)

   ▲1.)は、床上を引き回すことを想定、渦巻き状に巻いたケーブル(上の写真)をアルミ皿に置いた状態で測定。
  ▲2.静電容量計の測定周波数は250Hz。LANケーブルの伝送周波数とは大きく異なります。
  ▲3.(*c)(*f)(*g)を直列接続した静電容量に近似となり、シールドの有り無しには殆ど差はありません。
  
▲4.CAT7(カテゴリ7)のLANケーブルは、ケーブルが太く柔軟性がありませんので、LAN-050及び100型LANケーブルリールへの収納量が少なくなります。
   
▲5.CAT7(カテゴリ7)のLANケーブルのScTP記号は2重シールドを示し、CAT6のSTP同様に接続機器のアースが完全でなければ高機能を発揮できません。

静電容量とESD
 
LANケーブルの静電容量が何故問題なのかは、キャパシタンス静電気放電などで詳しく説明補足して頂くこととして、身近な実例では電子機器や部品の取り扱い時に、作業者が静電気障害防止用のリスト ストラップを手首に取り付けた状態で静電気を除電(放電)しながら作業しているとおり、人体には100200pF程度の静電容量(キャパシタンス)があり、作業や歩行によって常に発生する静電気を蓄えるコンデンサのようになっています。
 また、LANケーブルのキャパシタンスも上記
各部の静電容量表 ーF)のとおり、僅か長さ10mの芯線1本と床面間であっても人体の静電容量の2〜3倍からの静電容量があるのですから、 布設作業などで床やカーペットとの摩擦で発生する静電気は長さに比例した静電容量に蓄えられ、且つ、LANケーブルの両端が開放(未接続)の場合はケーブルシース(被覆:PVCやポリエチレン)と 銅の芯線(絶縁物:ポリエチレン)の間に大きな電荷が蓄えられます。
 これらに蓄積された
電荷量QC V)のエネルギーは、WJ)=1/2CV²ですから、ケーブルの静電容量C)と帯電した電位(V)の関係でESDの危険レベル決まることになります。
 このような静電気帯電の危険レベルとしては、爆発性のガス雰囲気で使用する
防爆機器の取扱に於ける接地や静電気除電について更に厳しい規格電気機械器具防爆構造規格などがあり、例えば水素ガスの雰囲気では人体への帯電が僅か2300Vを超えると危険レベルです。ですから上記のように帯電したLANケーブルなどは、絶対に引火爆発性のガスや粉塵雰囲気の危険場所に持ち込みすることが出来ません。
 しかし、電子機器のESD対策に於ける静電気帯電の許容エネルギーは、防爆規格ほど厳しくはありません。例えば人体やケーブルの静電容量を 200pF とした場合でも帯電電位10KVとしてエネルギーは 10mJであり、これは直接であれば電子機器の誤動作や半導体の損傷などを引き起こすレベルですが、正規の接続状態の電子機器であれば、これらに十分耐性を持つ設計がなされています。
 但し、これが乾燥した雰囲気で床のカーペット上を引き回ししたLANケーブルの状態を想定すると、
(ケーブルの静電容量X長さ)(ケーブルの帯電電位)からLANケーブルのESDエネルギー(*2)となります。
 ですから、このように帯電した両端が未接続で開放状態のLANケーブルをI/O機器のRJ45コモジュラジャックに
静電気除去ツールなどで、除電をしない状態で直接接続することは甚だ危険な行為となります。
(*2)防爆規格(IEC60079)では、静電気に対して厳しい規格用件があります。例としてプラスチック部品の使用ではその表面積に制限があるほか、防爆機器の静電容量に対する残留エネルギーにも規定があり、静電気の帯電や除電については、電子機器などの規格やESD対策と大きく異なりますので注意してください。

シールド付のケーブル(STPやScTP)だから安全?
 
よく聞く例で、ノイズやESDの対策からLANケーブルをSTP(シールド付)仕様を使っているので安全であると言われる方がいますが、これはLANケーブル両端が機器に接続された状態であれば、ノイズにも静電気に対しても安全と言うことであり、各部の静電容量表のとおり両端が開放されたLANケーブルでは、芯線1本対シールド、及び、シールド対アース側(床面)間のそれぞれをコンデンサと見做せば、各部の静電容量表の3.のとおり直列接続したコンデンサ回路になりますので、STPLANケーブルであっても静電気帯電の危険性UTPLANケーブルと変わりありません。 このほか、二重シールド(ScTP)のCAT7 LANケーブルなども同様です。
 更に注意が必要なことは、帯電したSTPケーブルのシールド側をアースに接続したとしても、
各部の静電容量表 F) のキャパシタンスからして、芯線のどれか1本対シールド間の帯電エネルギーに変わりはないと言うことです。
 つまり、布設中のLANケーブルは、UTPSTP
(*3)も移動して摩擦があれば常に静電気が帯電する物であり、ESDの危険性に変わりが無く結果として、電子機器はアースなどを含む完全な入出力ケーブル類が接続された状態でなければ、ESDに対する保護は成り立っていないという事です。
(*3)一時期、CAT6は無線LANや光ケーブルの普及で使われなくなるの声もありま したが、その後CAT6e⇒CAT7⇒CAT6aなど、次々と高機能なメタルLANケーブルが開発され、その情報伝達量や安全性と光ケーブルに比べ、扱い易さなどの面から工場や施設内 での使用は益々増えてきています。

接続する機器の保護機能
 
一方、LANケーブルを接続する側の【HUB】やLANのI/O機器、いわゆるネットワーク装置類は、通常最大2000 V以上のESD事象に耐えられる仕様になっています。
 また、これらは入出力回路が
パルストランスによるコモンモード接地なので大丈夫!などの声も聞きますが、これらはRJ45接続ポートのすべてのピンが完全に接続されていて、同時に電圧がかかる 条件を想定して考えられています。ですから接続ポートのどれか1本だけが一瞬でも早く接続された場合には、残り7本間の保護回路構成によって保護される条件が異なってしまいます。
 電子機器のESDの試験
JIS C 61000-4-2及びIEC 61000-4-2 の試験では、接触放電で 4kV気中放電で8kVを機器ケース外装に対して放電を繰り返して誤動作しないことの条件などがあります。
 
このように接続するLANケーブルや電子機器の安全対策については、取扱い説明書や警告表示PLラベルで詳しい説明がされませんので、布設作業する人の知識や経験に頼るほかありません。  なお、比較的多く発生するESDトラブルの原因例としては、電子機器のラッチアップ現象が理解し易いと思われますので是非、web検索で説明補足されることをお奨めします。

LANケーブルの静電気発生
 
ここでは、LANケーブルの移動使用と静電気帯電ということで、LANケーブルを床面やカーペット上を引き回し移動した場合を想定して説明しましたが、このほかにもLANケーブルを取り扱う上で、静電気帯電に注意しなければならない以下の例などがあります。

a)自然に帯電
 新しくLANケーブルを購入したときの包装の多くが、アルミ蒸着された導電性の袋などで帯電防止されている通り、LANケーブルは未使用の状態でも静電気帯電します。
 これは、前述の摩擦による静電気の発生の
ほか、ケーブルが置かれている場所において周囲からの高電圧源や高周波機器からの誘導などによる帯電と考えられます。

b)汚れを落とすと帯電
 あまり知られていない事で、LANケーブルの汚れを拭き取るときは注意が必要です。これはLANケーブルのシース(被覆:PVCやポリエチレン)の汚れを拭き取る場合など、静電気の帯電列順位差の大きな物質でこするほど大きな静電気が発生します。
 特に毛糸の手袋やフェルトの他、帯電材を付加した化学雑巾、溶剤の使用などは要注意です。ケーブルの汚れを落とす時は必ず“木綿の濡れ雑巾”を使う
ことをお奨めします。

c)他の帯電体に接触して帯電
 
既に帯電しているポリ容器や樹脂製の袋からの取り出し、作業机や椅子・工具類のケーブルやホース・梱包のパッキンやシートなどとの接触のほか、稼働中の 複写・印刷機械やコンベヤなど、普段ではあまり静電気帯電を意識していない物体に瞬時でも接近や接触することでLANケーブルに静電気帯電が発生します。

 このように、LANケーブルは思わぬことが原因で静電気帯電します。また、それらの原因ばかりかその危険レベルも様々であり、且つ、その現象が過渡的であり再現が難しいことからESD対策は、危険防止のための静電気除電(放電)を励行するほかありません。
斯様なことから(2)静電気除電とアース、及び、(3)安全対策ツールの実例として静電気帯電除去ツール:静電気除電ツールについて詳しく説明しました。

 

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