忘れた頃に・・・警告表示についての警告

これは、製造物責任法(PL法)が施行1995年7月)されて間もない頃の話です。情報提供者はある民生品メーカーの設計担当者さんで、笑うに笑えない警告表示の「絵表示と指示文の効果?」のお話しです。・・・しかし、なぜ今頃?

その始まりは・・・製品を分解すると危険なので「分解禁止の警告表示」をしなければならない、そこで家電製品などでよく見かける「ネジ回しと禁止マーク」の“分解禁止マーク”(*1)を組み入れ、「サービス員以外の方は分解しないで下さい」の指示メッセージを表示した警告ラベルを貼り付けて出荷しました。 

・・・・そして、暫く経たったある日の事、地方の販売店の故障修理サービス員の方から電話があり、分解できなくて客先で困っている!!のSOS。状況を聞くと「新製品oooのネジを4本外して持ち上げて振り回してるが、中で本体がガタガタするだけだ〜ァ・・・なぜ?

 

実はこの製品のケース構造は、プラスチックス成形加工品の下部ケースにゴム足を兼ねた長いネジ4本で本体を固定した後に、上部のケースは「上から押し込んでパチンとはめ込むだけ」また、取り外しの時は「左右側面を押して引き抜くだけ」の設計者が誇るアイデアの省資源・ローコストでチョー簡単組み立てで、Gデザイン賞ものとも言える設計の新製品だったのです。

その素晴らしい製品に製造者としての責任とユーザーの皆様への安全を配慮して、分解禁止の絵記号付きの警告ラベルを貼り付けたのです。しかしながら、この絵記号の中のネジ回しの絵が当のサービス担当者を大いに惑わせたました。

■何せ警告ラベルには「ネジ回しの絵とサービス員以外は分解するなの指示文」がある事から反対に「サービス担当者は分解すべし、分解するならネジ回しで」と素直に誤解・理解・思い違い ・・・早速ケースの前後左右と上面を調べたが、何とその取付にはネジなど一本も使っていない・・・でもネジ回しを使えってラベルが貼ってある〜・・・残るは、底面のゴム足を止めてあるネジム?オォ〜これだ!とばかりに取り外し、ケースに抱きつき尻振りダンスと相成りました。

さて、警告表示のマークですが、コレ、現在では広く知れ渡っている分解禁止のマークです。しかし、当時はこの他にも「高温のマークが温泉やお風呂?」とか「回転物のマークが右回りとか取り替え?」など、製造物責任法施行当初にはマークを理解どころかビックリするような思い違いもあり、こんな笑い話しのような勘違いもいろいろあったのです。

良かれと思い行った警告表示(*2)が思わぬ失敗を呼び、笑い話で済んでいる内は良いのですが、前例の様な状況でサービス員がケースを持ち上げて振り回すうちに、製品が足に落ちるなどして骨折したとなると、ユーザーに対する安全は考慮してあったとしても、サービス員などの作業者への安全配慮が足りなかった事が問題となります。

つまり「製品の安全を維持する者の事故や誤解を招いた欠陥表示」であり、製品に接する者全ての安全を確保しなければならない事を警鐘した例です。

既に製造物責任法が施行されて相当期間たった現在に於いては、警告表示の目的や絵記号の意味は広く周知されているところであり、メーカーも随時それなりの安全対策を講じているので、前述の様なことはもう殆ど起こりえないと思います。

しかし、これから恐いことは、製品の取扱いで当時から相当期間経過したことに於ける慣れや油断と、部品や表示が相当に劣化・老化した状態に陥っていることです。製造者としては製品出荷後の暫くは、その状態や機能を注視していますが、コレといった故障や事故が発生しないと『安心と慣れ』から『製品の機能が安定!』と思い込んでしまうことが多々あります。

多くの人が関心を持った製造物責任法』ですが、その責任期間がいつまでで、果たして製品の部品や表示の劣化・老化がどうなっている?そろそろ当時のPL安全対策や表示・説明の内容を再確認しておく必要があるのではないでしょうか。?

今となって、警告表示の勘違いによる事故が発生しますと、ユーザーの警告表示に対する認識が広く浸透していますので、PL法施行当初のような笑い話しではすみません。

つまり、警告表示の目的と指示文と絵表示の整合性など『警告表示の在り方考え方』などに於いては、当初に行ったPL対策について改めて見直しが必要な時期到来と言えます。(**警告ラベルのデザインマニュアルについては、このページ文末に案内してあります。)


完璧な警告表示デェ〜ス

■製品に潜んでいる欠陥を見出すには、危険を推測しなければならず、結果を待っていては手遅れです。ですから、前述の失敗談や事故情報(*3)などを参考に「製品の構造や働きと製品に接する者の行動との相性が適当か否か」を良く検討しなければなりません。

ところが、他社製品などの欠陥事故例を参考にしようとしても、得られる情報は、前述の笑い話におけるメーカーの失敗例の様な、事故やクレームにまで発展しなかった軽微なトラブルや、既に欠陥対策が完了済みであるなどの一般に公表しても差し障りの無い事柄か、もしくはPL事故情報やPL裁判判例報告書で報告される様な重大事故で、誰にでも知り得る事故事例しかありません。

何故なら、欠陥の対処方法を検討中の場合は企業秘密にするものであり、公表されるのはリコールのためや解決済みのものだけだからです。或いは、製品に潜在している危険に誰も気づいていなければ、当然の事ながら公表されることもありません。

特に警告ラベルなどの表示については未だに、「警告ラベルは貼って無いより有るが良い」とばかりに、警告する目的や環境を十分確認せずに表示した、メーカーの自己満足や言い逃れとも受け取れる“お守り札”的な内容の警告表示例も見受けられます。

警告表示上でとても恐い事は、文頭の話にある様に表示を見た者がどの様に判断して行動するか判らないところにあります。しかも警告表示が原因で事故が発生した場合は、誰にでも指摘できる欠陥の確実な証拠となり、警告表示そのものが欠陥であると認められた場合は、安価で簡単に改善できる物である事から、メーカーとして申し開きのできない事となってしまい、警告ラベル貼付の標語 (*4)にあった「思いやる ラベルが無くて 地獄行き」と同じ状況に陥ってしまいます。

製造物責任法(PL法)が施行され相当期間経過した現在は、ユーザーも製品安全に対する意識が非常に向上しています。そんな世情からしてもメーカーのPL法対策担当者は、永久に気をゆるせない仕事を抱えているとも言えるかも知れません。ここらで初心に帰り、PL法施行当時のノウハウ本などを読み返しておく事をお薦めします。

なお、警告ラベル(*5)や表示の考え方に付いての話題や資料は「なかまぼっくす」ホームページに多く紹介してあるほか、少数のラベルを作るいろいろな手段PLlabelのページに詳しく説明してあります。

■参考文献及び関連の資料■

(*1) JIS S 0101:2000規格及び(財)家電製品協会ガイドラインの分解禁止マーク、家電製品を始めとして多くの業種で使用されています。 
(*2)PL表示対策については「なかまぼっくす」ホームページで多くの話題や資料情報を提供しています。
(*3)(財)日本消費者協会発行「事故情報収集制度報告書」・(社)商事法務研究会発行「製品分野別製造物責任判例の研究」などがとても参考になります。
(*4)一枚から量産まで様々なラベル作りのノウハウや試験のチャートなどをホームページから提供しています。「思いやる ラベルが無くて 地獄行き」の標語は、プリンターの発色試験チャート:LTP-46
にあります。
(*5)警告ラベルを少数作り直しや追加する場合は、ラベル作りのいろいろなノウハウが紹介してある「ピイエルラベル」のページをご覧下さい。
(**)PL表示対策のバイブル的存在であった、FMC社発行・DHC社出版の日本語版「PL警告ラベルデザイナーズマニュアル」は、先ごろ絶版となりました。初心者にも理解し易いことから、警告ラベルとPL表示の在り方や考え方の教本や手順書として多くご利用頂いておりましたので大変残念です。斯様なことから弊社におきましても、PL対策についての相談者向け教本として確保してあります在庫が無くなり次第、供給できませんことをお知らせいたします。(この件につきましてお問合せなどありましたら
hallo@bansei.com 宛てにメールにてご連絡ください。)

この話しは、1997年2月にBANSEI「なかまぼっくす」から、メーカーの皆様が製品安全対策を考える上で役立ちそうな話題や資料を「PL対策に於ける表示関連の情報サービス」として提供したものの一つです。今回、製造物責任法が施行(1995年7月)されてから相当期間経過した最近の状況をふまえて更新しました。
(内容は、あくまでも現時点で当社としての見解であり、将来の規格、規定、法律判断などと異なる場合もある事をご承知下さい。)

この他の製造物責任法対策の話題は、・・・・・「なかまぼっくす」

少数の警告表示ラベルなどの政策手段は、・・・「PLlabel 」

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